
ジム・ロジャーズ氏に聞く(上)―『世界経済回復のけん引役はアジアと資源』
ジム・ロジャーズ氏に聞く(下)―『金、原油は今後10年は上がる 』
モーニングスターでは、世界的に著名な米投資家ジム・ロジャーズ氏に単独インタビューを行った。ロジャーズ氏は、ラーニングエッジ社が主催する「Wealth Management Forum 2010」セミナーでの講演のために来日中。インタビューの中で、ロジャーズ氏は、アジアと資源が今後の世界経済回復のけん引役になると予想すると同時に、金、原油に対して強気な見通しを示した。
――現在の世界経済の状況をどうみているか?
「昨年が余りにも悪かったこともあるが、良くはなっている。ただ、今後1−2年は悪くなることもあるだろう」
――いわゆる「リーマン・ショック」からどの程度立ち直っているとみているか?
「政府が大量に資金を使うことで一時的には良くなっているが、私からみれば、傷に絆創膏(ばんそうこう)を貼るようなもので、問題の先送りだ。長期的にみて本当の回復はないとみている。将来的には、通貨の問題、不況の問題などが出てくるだろう。ただ、経済の全体的な回復は難しいが、水処理、農業、コモディティ(商品)は良くなるとみている」
――経済が回復する中でけん引役となる国、もしくはテーマは?
「一般的には資源国だ。ベルギーよりはブラジルが、イタリアよりはオーストラリアが、アメリカよりはカナダの方が状況が良い。また、日本、中国も欧米よりは良い。総合的に言えば、アジア諸国の方が西欧よりも良い。良いと思うところは、中国、韓国、香港、シンガポールなどアジアだ。テーマに関しては、よく分からない部分もあるが、あえて言えば、アジアと資源だ。また通貨もある。通貨は今後10−20年で大きく状況が変わるだろう」
――農業、水処理の話が出たが、いわゆる「グリーンニューディール」や環境問題は経済回復のテーマとなるか?
「世界的に政府がグリーンニューディールをサポートしているので、明るい。ソーラーパワー(太陽光発電)も、個人的には経済的だとは思わないが、政府がサポートする方向にあるので、明るいだろう」
――ドルは今後も基軸通貨として成り立つとみているか?
「そうは思わない。ステータスが落ちている。状況が悪い。歴史的にみても、現在のアメリカの状況は悲惨であり、今後もっと悪くなる。アメリカ政府は今後もドルの印刷を続けるだろうが、すでにドルの使用を拒む人も出ている。ドルは今のステータスを維持できないと思う」
――ドルに変わる基軸通貨はユーロか元か、それともドル、ユーロ、元の3つが中心となるか?
「もし、あすにドルが崩壊するならばユーロしかない。しかし、20年先なら元だ。ユーロ以外で強くなるとすればアジアだろう」
――円が基軸通貨になる可能性はあるか?
「円ということでなく、アジアの通貨というパッケージだ。円、ウォン、元を一緒にしてユーロのような通貨をアジアで作ることだ。ただ、地域共通の通貨を作るには時間がかかる」
――日本経済の現状をどうみているか? また、政権交代が起こったが鳩山政権をどうみているか?
「今回政権が変わったが、どこの国でも政権交代には良いことも悪いこともある。日本でも起こるだろう。セクターとしては、政府に友好的であれば良くなるが、そうでなければ悪くなる。現政権は日本を良くするといっているが、どうなるのかは私には分からない。例えば、出生率が上がれば日本にとっては良いことだが、破産してまでとなっては良くはない。無駄な公共工事をやらないというのは良いことだ。ただ、実行に際して悪いことは起こり得る」
――今の日本は投資対象となり得るか?
「通貨に関しては弱いとは思っていない。保有するとすればドルよりも円だ。政権が変わったときに注意しなければならないのは、政権がどの業種・業態をサポートするかだ。現政権は子育て支援を掲げている。本当なら子育て関連株の株価が上がるだろう。私も持っている。日本株に関しては、この8−10カ月間上昇していたので、現在は買いではない。もし買わなければならないなら、アメリカ株よりも日本株だが、やはり買わない。ただ、良くなると思う株は持っている。例えばタカラトミー <7867> 。ハローキティも良い」
――中国株は?
「中国株は昨年秋に下落したところを買ったので、現在は買いではない」
――どうなれば日本に投資できるようになるのか?
「崩壊寸前の借金から抜け出すことだ。そうなれば見通しは明るくなる。あとは、輸入制限の見直しが必要だ。アメリカでは300円のメロンが日本では3000円もする。輸入制限で特定の業種が保護されており、国民はあるべき価格で物が買えない。門戸を開放すれば、ほかのところに使えるお金が増え、経済も良くなるという循環になる。価格が下がれば、被害を被る人もいるが、相対的にみて日本国民にとっては良いことだ」
――金、原油の見通しは?
「今後10年は上がるとみている。特に、原油は供給が少なくなるという懸念がある。また、通貨への不安から金などにシフトしていくだろう。銀、プラチナ、綿は上がっていくだろう。加えて、金も買いだ。現在、金、原油を持っているなら売るべきではない」
(完)
(出典)モーニングスター
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